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ロメオとジュリエット (ベルリオーズ) : ウィキペディア日本語版
ロメオとジュリエット (ベルリオーズ)

劇的交響曲『ロメオとジュリエット』(''Roméo et Juliette'')作品17エクトル・ベルリオーズが作曲した交響曲。「合唱、独唱、および合唱によるレチタティーヴォのプロローグ付き劇的交響曲」(''symphonie dramatique'')と銘打っている通り、大編成のオーケストラに独唱、合唱をともなう大規模な作品である。シェイクスピアの悲劇『ロメオとジュリエット』を題材とする。
== 概要 ==
1839年に作曲され、同年11月24日パリ音楽院のホールにおいてベルリオーズ自身の指揮で初演され、成功を収めた。その後、7年かけてベルリオーズは改訂を加えて現行版とした。
歌詞はフランス語で、最初にベルリオーズ自身がシェイクスピアの戯曲に基づいて散文で書き、詩人エミール・デシャン(Émile Deschamps)が韻文に改めたものである。ただし、実際に声楽が入るのは第1部と第4部の「ジュリエットの葬送」およびフィナーレのみで、あとは作曲者が自由に情景を取捨選択し、標題音楽として器楽のみで表現している。また第4部のスケルツォは本編とは関連を持たず、間奏曲として位置づけられている。
この作品全体の構成として、ベルリオーズは様式的な統一を意図的に図っていない面がある。交響曲と銘打っている点では、ベートーヴェン第9交響曲で取り入れられた声楽付き交響曲を踏襲していると考えられる。しかしこの作品では、その規模や様式がさらに拡大されており、管弦楽による標題音楽的な描写(第2部、第6部に顕著)、オラトリオグランド・オペラを思わせる終曲、歌曲を思わせるストローフなど、捉え方によっては、作品全体に複数の様式が混在しているかのような印象も受ける。こうした点に対する評価は様々であるが、この作品の独創性を高めている大きな要素となりえている。
第3部では、ワーグナーが「今世紀における最も美しいフレーズ」と評したように、ベルリオーズの一連の作品の中でも、旋律美がひときわ際立っている。しかしその一方で、部分的に作曲者の書法の不手際が見受けられるという意見もあり、ワーグナーもその点は「全く素晴らしい旋律の間に屑の山が積みあげられている」と評している。
そうした難点を超えて、むしろ前衛性が際立っている部分も見受けられる。特に第6部では、フェルマータを伴う全休譜による頻繁な休止、無調を思わせるかのような旋律、強弱の急な変化、断片的な構成など、当時としては実験的ともいえる響きも現れる。この第6部に関して、作曲者は「精選された聴衆の前で演奏されるのでなければ省略されなければならない」と語っている。また、エリアフ・インバルは「ジュリエットの死の場面の休止はウェーベルンの前兆を示している」と述べている〔1989年発売のCD:CO-3207解説書に記載。(ジル・マカサーのインタビューによる 訳:井上さつき)〕。
幻想交響曲」ですでに顕著だった斬新な管弦楽法は、本作で目覚しい効果を挙げている。特に第4部「マブの女王のスケルツォ」において作曲者は、名人芸的なパッセージを当時のナチュラル・ホルンに要求している。こうした演奏効果を完全に実現するのは、そうした当時の楽器では難しく、演奏法の観点からしても要求の多い作品だったことが伺える〔「ブーレーズは語る 身振りのエクリチュール」(著:ピエール・ブーレーズ、聞き手:セシル・ジリー、訳:笠羽映子)p.53,69〕。
その長大さと編成の大規模さのため、抜粋で(主として管弦楽のみの部分が)演奏される場合もしばしばある。

抄文引用元・出典: フリー百科事典『 ウィキペディア(Wikipedia)
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